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ボスと夢実験



スイスの精神医学者メダルト・ボスは、あるとき、夢に関する実験を行いました。

5人の女性に催眠術をかけて、「あなたに恋をしている男性が、ハダカで自分に突進してくる夢を見る」という暗示を与えたのです。

この実験に協力した5人の女性のうち3人は健康な女性で、残る2人は心の病にかかっていました。さて、暗示を与えられた女性たちは、実際にどんな夢を見たのでしょう。

3人の健康な女性は、与えられた暗示どおりの夢を見ました。しかも夢の中で、情熱的な時間を大いに楽しみました。まあ、平たくいえばエッチを楽しんだわけです。

ところが心の病にかかっていた2人の女性は、夢の中で不安になるばかりで、ひとときのアバンチュールを楽しもうなどという気分にはならなかったそうです。のみならず、このうちの1人は、ハダカの男性ではなく、軍服を着て銃を持った兵士に追いかけられた夢を見たといいます。

このように、同じ暗示を与えられた場合ですら、見る夢は人それぞれです。この場合は、健康な女性たちと、心をわずらっている女性たちの精神的な違いが、夢に現れたといえるでしょう。

つまり、健康な女性たちは男性をおそろしいものと思わず、自然に関係を楽しんでいるのですが、そうでない女性たちにとっては、男性は不安と恐怖の対象でしかなかったのです。

この実験からもわかるように、夢とは、その人の精神状態や価値観を反映するものなのです。そう思って夢解釈をすると、興味がつきません。