自分がみた夢を、誰かに話したことがありますか?
「夢」というのは、とてもプライベートなものです。現実とはなんの関係もない、自分の頭の中で作り出した幻影……だから人に話しても意味がない、と思う人も多いでしょう。
人は誰でも夢をみます。「夢をみない」という人でも本当は夢をみていて、覚えていないだけなのです。
自分自身のものであるはずなのに、ありえない喜びや恐怖に心乱され、自分でコントロールすることのできない……夢。
そもそも人はなぜ、夢をみるのでしょうか。近年、眠りについての研究が進んで、夢についてもいろいろなことが分かってきました。
以前は、眠りとは単に脳が休息している状態だとされていました。けれど眠っているときも脳は活動しています。
眠りには、眼球が動くレム睡眠と、より深い段階のノンレム睡眠があります。レム睡眠時には感情をゆさぶられるドラマチックな夢を見ることが多く、ノンレム睡眠時の夢はとりとめのない日常的なものが多いのです。そのどちらも、記憶の形成と、再構築に深くかかわっています。
眠っているとき、脳は意識の扉を閉じて、外界からの情報を遮断しています。五感から絶えまなく送られてくる情報に対応するという重要な役割から解き放たれて、「自分」という表層意識がゆるくほどけていきます。
神経が組み替えられ、記憶が再構築されていく、そのとき脳内スクリーンに映る映像……それが、毎晩みる夢なのです。
意識にコントロールされていない夢は、本人自身も知らなかった「恥ずかしい願望」や「見たくない恐怖」「抑圧された本心」を反映しています。
本来、誰にでも気軽に話すべきものではないのでしょう。
でもだからこそ、夢を話してくれた相手とは、秘密を共有する仲間のような親近感が生まれるのではないでしょうか。
明日の朝、夢をおぼえていたら、誰に話しますか?
そして、誰の夢の話を聞いてみたいですか?
高橋 桐矢
幼少よりファンタジックな空想世界を好み、創作の道を志す。独学でタロット占いと西洋占星術を習得。のちにヘイズ中村氏に師事し、20世紀最大の魔術師クロウリーの魔術を学ぶ。占い師として活動しつつ、小説を書き、2000年、SF小説で小松左京賞努力賞受賞。著書に『占い師入門』『秘密のジオマンシー占い』『イジメ・サバイバル あたしたちの居場所』など。日本児童文学者協会会員。
他にも気になる夢を見たときは、夢辞典で検索してみてくださいね。