様々な解釈が存在する夢占いの中でも、特に秘密めいているのが「食事」でしょう。
たいていの参考書では、食事そのものを夢に見るのは吉兆なのですが、それを食べる、ということになると、吉凶が激しく分かれてしまいます。
大雑把にまとめると、東洋系の象徴を多く採り入れている場合は、食べ物は食べるのが吉、美味しければ大吉、と解釈します。対して西洋系の象徴を使う夢占いでは、食べることは不幸の始まり、とする場合が多いようです。
東洋の文明では、何かを手に入れる、自分の身辺に取り込むという現象を、比較的ポジティブにとらえますよね。
そのため、本能に正直な行動をした方が利得感が強く、そこから吉夢とされることが多いのでしょう。
では西洋は逆にストイックだから……という訳ではありません。ここには異世界の食べ物伝説が絡んでくるのです。
ギリシア神話では,冥王ハデスに略奪されたペルセポネーが、ハデスからもらった12粒のザクロのうち、4粒を口にしてしまったため、一年の三分の一を冥界で過ごさねばならなくなりました。
また、妖精が出てくる民話では、人間は彼らの世界を好きに出入りできるけれど、そこで出された食事を口にしてしまうと二度と人間界に戻ってこられなくなるというルールがあります。
また、浦島太郎のように異世界でご馳走を食べてから帰ってきたら、信じられないほどの時間が経っていたという民話も多く存在しています。
異世界に行くのは自由、でもそこで何かを食べてしまえば、自分が生きる基盤をそちら側へ根付かせてしまうことになる……こうした考えは、昔から遠くの国へ戦や行商で出かけた男性が,そちらの国にも家庭を持ってしまうという悲劇への戒めかもしれません。
あるいは私たちの知らない、神秘の世界が本当に存在しているからかもしれません。
どちらにしても、夢の世界の真相はまだまだ解明されないことばかり。
そこをよく考えてみれば、夢の世界は冒険して楽しむだけに留めて、そこに腰を落ち着けてしまわないように気をつけるべきかもしれません。
特に見知らぬ食べ物が目の前に出されたら、その陰で妖精が笑っていないか、よく確かめてくださいね。
ヘイズ 中村
病弱な幼少時代を多くの書籍を友に過ごし、神秘世界へのあこがれを募らせるようになる。中学生頃から本格的に西洋密儀思想の研究を開始、成人してからは複数の欧米魔術団体に参入し、学習と修行の道に入る。メディアを通じて伝わるギャップに嫌気がさし、現在はメディア出演NGながら、魔女・占い師として、様々な魔術書や占い書の翻訳と執筆を主な活動とし、現在も第一線で活躍する日本魔女界の重鎮にして、日本屈指の占術家。
他にも気になる夢を見たときは、夢辞典で検索してみてくださいね。