「寝言に答えると死ぬ」「不吉」などと言われることがあります。
あまりにもハッキリとした寝言に、つい答えてしまったら? 大丈夫。心配いりません。
寝言で会話したのに、翌朝、当人はまったく覚えていないこともあれば、会話している間に目が覚めて起きてしまうこともあります。
起きた場合、当人にとっては夢の中の誰かと話していたつもりが、目覚めてみたら目の前の現実の相手と会話していたということになるわけです。
近年の研究では、脳は、眠っている間に記憶の整理をしていることがわかってきました。
単に休息しているのではなく、外界からの情報を遮断して、起きていてはできない大事な作業をしているのです。
そのときに話しかけて、いたずらに外界から「聴覚」への刺激を与えるのは、害とまでは言えなくても、やはり「お邪魔」ではあるのでしょう。
本来、眠っているときは、外界への扉は閉ざされています。
外界からの刺激に反応しない代わりに、夢見ている内容も「寝言」として表に出てしまうことはないはずなのです。
ところがこの、眠りの「扉を閉じる」仕組みの一部がうまく働かなかったりすると、「寝言」が漏れてしまいます。
赤ちゃんが一日何度も起きたり眠ったりするのは、まだ眠りの仕組みが未熟だからです。
子どもが眠りながら起き上がって歩き出す夢遊病は、眠りと覚醒の調節がうまくいっていないからです。
そして、年をとるとなかなか眠れなくなってくるのも、眠りの仕組みが老化してくるためです。
それほどに、眠りというのは、精妙で複雑な仕組みの上になりたっているのです。
寝言を言うくらいならよいのですが、眠りながら怒鳴ったり激しく暴れることが続く場合は、「レム睡眠行動障害」の可能性があります。
その場合も、生活習慣や薬で治療することができますので、睡眠外来を受診してみましょう。
眠っているとき、脳は扉を閉ざして、大事な作業をしています。
面白い寝言を聞いても、そっとしておくのがよいかもしれません。
高橋 桐矢
幼少よりファンタジックな空想世界を好み、創作の道を志す。独学でタロット占いと西洋占星術を習得。のちにヘイズ中村氏に師事し、20世紀最大の魔術師クロウリーの魔術を学ぶ。占い師として活動しつつ、小説を書き、2000年、SF小説で小松左京賞努力賞受賞。著書に『占い師入門』『秘密のジオマンシー占い』『イジメ・サバイバル あたしたちの居場所』など。日本児童文学者協会会員。
他にも気になる夢を見たときは、夢辞典で検索してみてくださいね。